立った高い平面を支えている石垣が望まれた。そして、遥かに右の後方には、突けばぽきりと折れそうな鋭い山が薄紫の頭を出していて、右手に廻った一帯の山脈は、屏風に似た岩石の成層で、角を明るく日光の中に照り出していた。
 路はしだいに細まり険しくなった。矢代は汗をかきかき雑草を靴で踏み跨いで歩いた。屈曲して行く路の角角で下を見ると、青い実をつけた蔓草の中から海が見えたりした。柏や小松以外は灌木が多く山路は明るかった。矢代はいつか読んだある歌を思い出した。それは誰の歌だったかもう忘れたが、やはり父を亡くした人の歌で、いつか自分にもこのようなときが一度来るなと思い、そのときのことを想像して和歌の雑誌の中から、その一首だけを覚え込んだものである。多分作者は地方の無名の人だろう。
「葬路の山草茂み行きなづみ骨箱の軽さに哭かんとするも」
 彼はこれを繰返し手にした骨箱を一寸振ってみながら、今自分にもそれが来ているのだと思った。
「山草茂み行きなづみ――」
 実際それは丁度この歌の通りで、この文句をどこかに覚え込んでいたためばかりに、自然にこのようなことをしてみたかったのかもしれなかった。しかし、彼の父の
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