かる。父の成就させたそのトンネルだけは、どうしても父の骨に見せねばならぬ。――こんなことを考え考え彼は眠っているのだった。ときどきはっきりと眼が醒めることもあったが、車内を見るとまだやはり夜中だったりした。一度眼が醒めると、寝つくのがまたなかなか厄介で、出発前に気にかかっていたことなど、あれこれと思い出したりした。
「まア、君もお金が沢山あったところで、結婚すれば、遊んで暮すということはしない方がいいですよ。だから、君、久木会社へ入社しなさい。席だけ入れておけば、後は僕が何んとかする。」
結納を携えて東野が来てくれたとき、親切にこう彼に云ってくれたことなど、矢代は眠つかれぬままその処理について考えた。このことは彼にはかなり重要な問題で、考え始めると眼が冴えてゆくばかりだった。
「僕にはお金などありませんよ。ですが、久木さんの会社へ勤めるといっても、僕などあそこの会社にとっちゃ、ただ邪魔するばかりで、不用な人物になるのが落ちですからね。それじゃ、気の毒でしよう。」
と、矢代は有耶無耶にそのとき答えたが、いつもの癖で、東野は彼の思惑など頓着せず、まア、入れ入れという鷹揚さで、勝手に矢代
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