ら矢のように沼の水面へ射し透っている光の縞を眺め、ふとむかしのある時代を思い出すのだった。それは奈良朝から平安前期へかけてのころだったが、そのときも、日の光はこんなに縞を作り、嫩葉の色もこのように柔かだったにちがいないと思った。そして、唐から帰って来た留学生たちの多くも、結婚の際に、ちょうど今の自分のように、いにしえを想い、今を憶いし、追い迫って来る仏の思想から※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]れ脱する労苦も繰り返し、妻となる婦人を仏の手から奪い取ろうとしたことだろう。
「僕はいま自分の部屋を直させているんですがね。この大工の細君は、とよといってずっと前に僕んとこにいた女中なんですよ。郷里が僕の母と同じなものだから、何かというと、今も僕んところへ来てくれるんだが、このとよが昨日も来て、僕たち大笑いしちゃった。」
矢代はこう云ってからとよの話を少ししてみた。矢代の母が雨もれのする家の壊れた部分を直したく、ある日とよの主人を手紙で呼んだ。手紙の着いたその日は折悪くとよの子供が自動車に撥ね飛ばされて即死した日だった。それにも拘らず母へ返事をその日に書いてくれたりしたとよ
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