すことにした。
 千鶴子からは二日目に返事が来た。内容は矢代の手紙に自分として異を樹てるところはどこにもないのみではなく、幾回も繰り返して読み、訓えられたことも少くなかった旨を感謝してあった。殊に手紙の中で、自分らがみやびやかなお心の一端を担うお使者だというところで、はっと眼が醒めたような思いのしたこと、そして、そんな大切なことを今まで誰からも訓えられなかったことを残念に思い、自分はそのお使者にさえなり得られるものでないことをも初めて気づいたと謙遜してもあって、全体は平凡ながら、素直なこころ持ちのよく出たものだった。
 矢代は自分の手紙に対し、反抗しようとさえ思えば限りもなく出来る部分の多いときに拘らず、そこを終始緘黙していてくれた千鶴子に、遠く共に海を渡って来たものの親しみを一層つよく感じた。もし千鶴子が日本を少しも出ず今のままにいる婦人であったなら、あるいは、二人の間はこのまま事断れていたことかもしれぬとも思われた。その点、帰って以来、会うごとに少しずつ暗示を与え、なだめすかし、見て来たものの相違を揉み込むことに努めた自分の忍耐も、ようやく芽をふいて来たと思って彼は喜んだ。


 
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