見るほど、先祖を侮辱する気持ちにはなれぬのです。これを子孫が栄光と感じるのは、敗北を喜ぶ僕の感情とも見えますが、しかし、僕らの国の中で起った敗北は、すべて敗北にはならず、散華に変じるという奕奕たるわが国の特殊性を感じましたのは、何んといっても、僕の外国旅行の賜物だったと思います。そして、このようなことをもし負け惜しみとあなたが解されますなら、僕には、自分の国の美しさが分らなくなるのです。またあなたと結ばれようとする僕たち現在の運命の慶びも。――僕は一日も早く、もう姿を消しかけている僕の家の城砦にあなたとともに登り、雑草の中に伏して、あのパリの杜の中でのように土の匂いを嗅いでみたいと思います。」
 千鶴子に与える恐怖を和げる気持ちも手伝ったとはいえ、矢代は、そのために偽りなく大胆になり得られたことを今は喜び、幾度も読返してその手紙を出すことにした。

 千鶴子からの手紙は一週間も隔いて届いた。それは矢代が予想した慶びよりも、むしろ煩悶し、恐怖した心情のさまの露わに窺える手紙だった。彼の手紙を見た暫くは、自分にこの結婚の資格のないことを初めて自覚した苦しみが述べてあり、今もそれが取りきれず
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