じた空なるものに見える習慣だった。
 矢代は千鶴子に出す手紙には、自分のそのように見えて来ている空というものの考えも、よく彼女に分る風に書き込んでみたかった。
「こちらで起ったことは、みんな間違いだなんて、そんなこと、――あなたがいつもそんなことを思ってらしたのが、何んだかしら、いやアな気持ちよ。」
 パリで別れる際にそう千鶴子の云った言葉に対して、矢代が返事を与えねばならぬのも、彼はこの手紙の中で書くことが適当だと思った。すべて外国で起ったことの締め括りは、自分の国に戻りついてからにしたいと思ったあのときのことなど、それもやはり帰って来てみて間違いではなかったと今彼は思うのであった。
 矢代は結局千鶴子に手紙を書いた。それには、さまざまな自分の考えを述べた中に、キリストのようには自分のいのちを怨みに思ってはならぬということ、そして、もしキリストが日本に生れていたなら、もっとも科学的に考えた場合、高山彦九郎の位置にいたと思うということを忘れずに附けてから、最後にこう書いた。
「僕は自分の家の悲劇に関しましては、初めはあなたに云いたくはないと思いました。しかし、あなたも一度は僕とともに、
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