か、というのが今後の世界だ。間違いない。」
東野のそう云うのに、矢代は頷きながら、今日の東野は正確に一点から着実に話を拡げて来たものだと思った。そして、どういうことともなく、彼はいつもの日より槙三に会ってみたくなるのだった。
「東洋といえば、僕らは先ず中国のことを考えるが、これで外国人が東洋といっても、何も中国とは限らないでしょう。ギリシアだって、エジプトだって彼らから見れば、東洋に見えるらしいんだから、そこが僕らと大ぶ違いますね。」と、矢代は云った。
「そうだ。ギリシアも東洋風に外人には見えている。西洋文明の根本のギリシアがあんな風に見えてるんだと、僕らもこれで一寸考え直さなくちゃ、分らなくなることが多いよね。ゲーテの全作品が、全体を通じてどことなく東洋へ傾いていると、そんなにヴァレリイは云ってるよ。そしてね。それが面白いんだが、かくのごとく東洋を好きだということは、こんな西洋的なことがあろうか、と結んでいるところがあった。うまいね、なかなか。その筆法を用いると、僕らが西洋を好きだということは、これほど東洋的なことがあろうか、と、そう云わなくちゃならん。どうかね。しかし、君、これは本当のことだよ。」
「なるほど、それは素晴しい表現ですね。」と矢代は感心して云った。
「そうだよ。実に立派だ。」
「平和というものは、そういう表現力にひそんだ力にあるなア。」
「僕らはそういう心を拾い上げて、機会あるごとに、それを巧みに云いふらさなくちゃならん務めもこれであるんだが、とんと皆は、忘れてしまうんだよ。僕は近近一度、中国へ行こうかと思っているんだ。小学時代からの友人が中国へ行っていてね、蒋介石に好かれているんだが、この男が来い来いと云って聞かないんだよ。」
「あなたの中国行きは、硯を探しに行くんですか。」と矢代は訊ねた。
「いや、そういうこともあるけれども、しかし、これで中国という国は、そこは日本と違って、文学者を非常に信用してくれるところだよ。文学者だけは、謀略をしないと信じ切っている。そういう伝統がむかしからあるのだね。他のもののいうことは、直覚的に、少し割引きして話を聞いているところも、文学者にはそうじやない。小谷もむかしは文学青年だったものだから、多分ひとつはその誠実さがまだ残っていて、そこが蒋介石の気に入ったところかもしれないね。」
車が上野の杜の中へ這入ってい
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