馬車の上に舁《かつ》ぎこんだ。馬子が手綱で一つひっ叩くと、鬣《たてがみ》を振り上げた馬は躍り上り、車が動いていった。私の荷は薄雪の中に見えなくなった。人より荷の方がつよく生きぬいて来たように見えるのは、どうしたことだろう。私は雪の中に立って轍の音の遠ざかるのを淋しく聞きながら、家の中へ這入った。
せつの式は新庄の婿の家で挙げられている。久左衛門の宅では留守式で、清江や私の妻は手伝いに行ききりだったが、夜になって、祝いが崩れ、乱酔した参右衛門の声が炉端から聞えて来た。妻や子供たちは恐れをなして早くから寝た。酒乱癖の彼の酔った夜は、清江はあたりの物をすべて取り片附けて傍へは近よらない。鉄瓶《てつびん》、薬鑵《やかん》、どんぶり鉢、何んでも手あたり次第に清江に投げつけ、「出て行け、帰れ。」といいつづける参右衛門の口癖も、今夜は結婚式で上機嫌に歌を謡っている。袴をつけた大きな顔をにこにこさせ、暫く皆を笑わせてはいるが、後はどうなるものか分らない。
「参右衛門が酔ったら、そっと座を脱して下されや。恐ろしい力持ちじゃ。おれはあれから殴られた殴られた。」
と、こう私に注意した久左衛門のこともあ
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