、三十過ぎのビリケン頭をした、眼の細く吊り上っている、気の弱そうな正直くさい童顔の男であった。大きな軍靴を穿いているところを見ると復員らしい。円顔で、おとなしい口もとが少し出ていて、疑いを抱かぬまめまめしい身動きは、なるほど、こんな仏像は奈良や京都の寺でよく私は見たことがある。炉に対いあっている間も、私に見詰められるのが辛そうな様子で、絶えず横を向いて話している。
「これから東京への土産に荷車を買いに行くんですよ。それから羽黒へ行って、帰ってから大山へ廻って――何が何んだかもう分らない、急がしくって――」
 こういうことを云うときも、そわそわし、ひょこひょこしつづけている。客の今日一日に歩き廻る円囲を頭に泛べてみても十五里ほどの円だ。私はこの人を仏だと思ってみていることが、何んだか非常に面白くなって来たようだ。
「一日で出来るのですか、そんなこと。」と私は訊ねた。
「この間まで兵隊へ行ってたものだから、まア、こんなことはね。東京へ帰って百姓をしなくちゃならんものだから、農具を買い集めているんですよ。なかなか無くってね、それに有っても高いことをいう。」
 とにかく、生れはこの近村で自分は
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