もいてくれねば、不便なことが多くて困るものだ。私たちはこの参右衛門の家にいて、まだここから一升の米さえ買っていない。無論、貰ったこともない。

 十一月――日
 突然のことだが、意外なことが起って来た。東京から農具を買い集めに来た見知らぬ一人の男が、参右衛門の所へ薪買いに来て、東京へ貨車を買切りで帰るのだが、荷の噸《トン》数が不足して貨車が出ない。誰か帰る者の荷物を貸す世話をして貰いたいというのだ。そこで私たちにその荷の相談があった。その客というのは、私も知らないばかりか参右衛門も知らない。まったく知らないその男の荷として、私の荷物を送る冒険譚になって来たのだ。しかし、このような雪ぶかい中から私らが動き出すためには、こんな唐突なことでもない限り容易に腰は上りそうもない。先ずその客という人間にひと眼あい、私は人相で決めたいのだが、荷を積み込む日は後三日の中だという。

 しかし、私にはまた妙な癖があって、人の運命というものは人から動いて来るものだと思えないところがいつもあるのだ。もう、そろそろ帰らねばならぬときだと思っているときに、まったく偶然こんな好都合な話が持ち上って来たということは
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