の地主階級では諦めの訓練が不足しているようだと、ふとそんなことを私は思った。
鶴岡から私を案内して来てくれた佐々木剋嘉君とここで一泊して、翌日二人は四時の列車で帰る。余目まで来たとき、大きな五升入の醤油樽を背負っている佐々木君が、
「これをどうして水沢まで持って帰られますか。」と訊ねた。
「その樽は私のですか。」
「そうです。井上君があなたにと云ってお土産にくれたものですよ。」
重い醤油を始終背負ってくれながら、長い間今まで黙っていてくれた佐々木君に私は恐縮した。この夜は、鶴岡の同君の所で厄介になり、二度の恐縮である。
十一月――日
一年を通じて十一月の路ほど悪い路はないと、私のいる村では云うが、まったくこの月の路は路ではない。参右衛門は山へ自然薯《じねんじょ》を掘りに行く。彼のする仕事の中でこれほど愉しみなことはないそうだ。私の妻は腹痛で寝ており、参右衛門の妻はまた泥田の中で唐芋を掻き廻している。冬越しをするには無くてはならぬ食料だ。空気は冷えて来て濡れた山肌に大根の白さが冴え静まり、揺り動かすように落葉だけ散って来る。
佐々木君の所から支那哲学の書を買って来たのを読み
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