えば良いだろう。そんな米のことは、女のすべきことじゃないか。」
「お米のことは、男のするべきことですよ。どこだってそうだわ。」
「そんな男ろくな奴か。」
「だって、Sさんのようなお豪い方でも、自転車でいらしたというじゃありませんか。」
云うかもしれないな、と私の思っていたことをまたうまく云い出したものだと、私も弱った。S氏は文壇の老大家で私の尊敬している作家だが、その人が知人の若いM君の所へ自転車で米借りに乗りつけられたというリュック姿のことを、M君から聞いた折、私はその直截的な行為に自分を顧みて感服したことがあった。
「闇左衛門とM君とは違うからな。」と私は苦しく云った。
「どうしましょう、ほんとうにもうないわ。」
米櫃《こめびつ》の蓋をとって枡《ます》で計ってみている妻の手つきがかたかた寒い音を立てている。私は一日に四杯、他のものは十杯ずつ三人、併せて一升と少しで足りるのに、私のいる家の参右衛門の所では同数の家族だのに四升でまだ足りぬ。私はいつか一日四杯だと話すと、「ふうッ。」と呼吸を吐いた参右衛門、じろじろ私の顔を眺めていてから、「人じゃないの。」と云ったことがある。
とこ
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