すると、突然一人の頭の中ヘカンナの予言が浮び上つた。彼の垂れ下つた両手は遽にぶる/\と慄へて来た。
「吾らは絶滅するであらう。」
 彼の叫びを聞くと同時に、他の一人の眼は急に光りを発して拡がつた。
「何に故か!」
「吾らは絶滅するであらう!」
「何に故か!」
 二人は肩を掴み合つた。さうして、仇敵のやうに相手の眼の中を覗き込むと、無言のまま激しくその肩を揺り合つた。と、二人は相手かまはず過去の鬱積した憤怒を一時に爆発させて、互に掴んだ肩を突き放した。
「涜神者!」
「姦淫者!」
「簒奪者!」
「欺瞞者!」
 二人は餓ゑた白痴のやうに顔を振りながら、大道を彷徨ひ歩いてまた往き合ふ人々を罵つた。
「ガルタンを滅亡せしめたのは爾である。ガルタンを吾に返せ。」
「爾のためにガルタンは滅亡した。ガルタンを吾に返せ。」
 大路の人々は立ち所に酒甕で二人を打つた。が、二人は酒甕の破片を全身に突き立てたまゝ、尚知らざるごとく人々の間を吠え狂ふと、その声を聞きつけた者達は、一斉に忘却してゐたガルタンの記憶を投げつけられて戦慄した。と、忽ち彼らは二人に感染した狂人のやうに怒り出すと、また相手かまはず往き合
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