に兵士たちの間を馳け廻っていた。出陣の用意は整った。長羅の正しく突《と》がった鼻と、馬の鼻とは真直に耶馬台を睨んで進んでいった。数千の兵士たちは、互に敵となって塊《かたま》った大集団を作りながら、声を潜《ひそ》めて彼の後から従った。長羅の馬は耶馬台へ近か寄るに従って、次第にひとり兵士たちから放れて前へ急いだ。このため兵士たちは休息することを忘れねばならなかった。しかし、彼らはその熱情を異にする長羅の後に続くことは不可能なことであった。そうして、二日がたった。兵士たちは、ある河岸へ到着したときは、最早《もはや》前進することも出来なかった。彼らはその日、まだ太陽の輝いている中《うち》から河原の芒《すすき》の中で夜営の準備にとりかかった。
遠い国境の山の峯が一つ高々と煙を吐いていた。太陽は桃色に変って落ち始めた。そのとき、遽《にわか》に対岸の芒の原がざわめき立った。そうして、一斉に水禽《みずどり》の群れが列を乱して空高く舞い上ると、間もなく、数千の鋒尖が芒の穂の中で輝き出した。
「耶馬台の兵が押し寄せた。」
「耶馬台の兵が攻め寄せた。」
奴国《なこく》の兵士たちは動乱した。しかし、彼らは
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