何事《なにごと》であろうか、と考《かんが》えたのが神《かみ》への一|歩《ぽ》の私《わたし》の近《ちか》づきであった。今《いま》思《おも》えば私《わたし》がこの探索《たんさく》の方向《ほうこう》をもったということが、私達《わたしたち》友人《ゆうじん》の中《なか》での特長《とくちょう》ある素質《そしつ》であったことに気《き》がつくのだが、そのときはそれが私《わたし》の友人達《ゆうじんたち》からの敗北《はいぼく》の結果《けっか》だとばかりより思《おも》えなかった。それ以後《いご》の私《わたし》の謙譲《けんじょう》さは私《わたし》とQとの間《あいだ》を一|層《そう》親《した》しく接近《せっきん》せしめるばかりであった。Qは私《わたし》にはことごとに助力《じょりょく》を与《あた》え、私《わたし》の性格《せいかく》を友人中《ゆうじんちゅう》並《なら》ぶものもなく高《たか》いといい、私《わたし》の頭脳《ずのう》の速度《そくど》の遅《おそ》い原因《げんいん》を過度《かど》の頭《あたま》の良《よ》さが常《つね》に逆《ぎゃく》に働《はたら》くがためだと賞《ほ》め、発見力《はっけんりょく》や発明力《はつめい
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