つものように噴火口《ふんかこう》から拾《ひろ》って来《き》た粗面岩《そめんがん》の吹管分析《すいかんぶんせき》にかかっていると、突然《とつぜん》リカ子《こ》が私《わたし》の部屋《へや》に這入《はい》って来《き》てデアテルミイが壊《こわ》れたようだから見《み》て貰《もら》いたいという。私《わたし》は彼女《かのじょ》に何事《なにごと》かいわれると不思議《ふしぎ》に自分《じぶん》の勉強《べんきょう》を投《な》げ出《だ》す習慣《しゅうかん》がついていて、投《な》げ出《だ》した瞬間《しゅんかん》これは失敗《しま》ったといつも思《おも》うのだ。そこへいくとQは勉強《べんきょう》の時《とき》となると誰《たれ》が何《なに》をいっても横《よこ》を向《む》くことさえ稀《まれ》である。私《わたし》は私《わたし》の勉強《べんきょう》を投《な》げ出《だ》してリカ子《こ》の後《うしろ》から従《つ》いていきながらもQの豪《えら》さを考《かんが》えさせられてひとり腹立《はらだ》たしささえ感《かん》じていた。それで私《わたし》は他人《たにん》の勉強《べんきょう》をしているとき教養《きょうよう》ある女性《じょせい》ともあろうものが何《な》ぜ邪魔《じゃま》をするのだと怒《おこ》りながらリカ子《こ》の部屋《へや》へ這入《はい》っていくと、あなただからこそいつでも何《な》んでも頼《たの》めるのだ、デアテルミイのように直接《ちょくせつ》自分《じぶん》の皮膚《ひふ》へあてがう機械《きかい》の狂《くる》ったのを直《なお》して貰《もら》うのもあなただからこそではないかという。しかし、私《わたし》は私《わたし》で自分《じぶん》の頭《あたま》がだんだん悪《わる》くなるのも君《きみ》が私《わたし》の頭《あたま》を使《つか》うからだ。同《おな》じ使《つか》うなら私《わたし》の頭《あたま》を引《ひ》き摺《ず》り上《あ》げるように使《つか》ってくれ、そうでなくとも私《わたし》の頭《あたま》は君《きみ》の方《ほう》へ向《む》き過《す》ぎて困《こま》るのだというと、リカ子《こ》は急《きゅう》に黙《だま》ってしまって私《わたし》の膝《ひざ》へ頭《あたま》をつけたまま動《うご》かない。私《わたし》は動《うご》かないリカ子《こ》を上《うえ》から見《み》ていると、私《わたし》がリカ子《こ》にそういうことをいう資格《しかく》もないにも拘《かかわ》らずいい出《だ》したのでリカ子《こ》は困《こま》って泣《な》いているのだと思《おも》い込《こ》んだ。それで私《わたし》は直《す》ぐ何《なに》かいい訳《わけ》をしようと思《おも》い、周章《あわ》てて彼女《かのじょ》を起《おこ》そうとすると、リカ子《こ》はリカ子《こ》で私《わたし》が彼女《かのじょ》をいよいよ事実的《じじつてき》に愛《あい》し出《だ》したのだと思《おも》い込《こ》んだと見《み》えて、ますますぴったり身体《からだ》をひっつけて来《き》て放《はな》れない。すると、私《わたし》の頭《あたま》は一|層《そう》混乱《こんらん》を始《はじ》めるばかりで何《なに》が何《な》んだか分《わか》らなくなり、時間《じかん》も場所《ばしょ》も私達《わたしたち》二人《ふたり》からだんだんと退《しりぞ》いてしまったのだ。この過失《かしつ》をこれだけだとすると別《べつ》にこの場《ば》の二人《ふたり》の行為《こうい》は過失《かしつ》ではないのだが、この事件《じけん》の最《もっと》も最初《さいしょ》に、二人《ふたり》の意志《いし》とは全《まった》く関係《かんけい》のないデアテルミイの振動《しんどう》がリカ子《こ》の身体《からだ》を振動《しんどう》させていたということが、二人《ふたり》の運命《うんめい》をひき裂《さ》く原因《げんいん》となって黙々《もくもく》と横《よこ》たわっていたのである。後《あと》で気《き》づいたのだがこのラジオレーヤーと同様《どうよう》な機械《きかい》は私《わたし》がリカ子《こ》の部屋《へや》へいく前《まえ》から、リカ子《こ》は最早《もはや》いくらかの腹痛《ふくつう》を自分《じぶん》で癒《なお》すためにかけていたのだ。だから彼女《かのじょ》がその途中《とちゅう》で機械《きかい》の狂《くる》いを直《なお》そうとして私《わたし》を呼《よ》びに来《き》た時《とき》には、もう彼女《かのじょ》の身体《からだ》は十|分《ぶん》刺戟《しげき》を受《う》けて既《すで》に過失《かしつ》に侵《おか》されていたのである。しかし、私《わたし》は彼女《かのじょ》のその時《とき》の興奮《こうふん》がただ私《わたし》の為《ため》ばかりだと長《なが》い間《あいだ》思《おも》っていて、彼女《かのじょ》がその時《とき》そのようにも私《わたし》を愛《あい》した態度《たいど》の中《なか》には、機械《き
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