(花電車)
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なるほどまだ誰も花電車にだけは乗ったものはないだらう。渡船場で、人を轢き殺して来た大群集のまん中を通るのは、かういう妙音でなければ渡れない。誰の前にも橋のない河は流れてゐる。三途の河が。望む平和郷は乗れないウソ電車の中にあるだけか。乗れ乗れ、介意ふこたアない、とこの運転手北川冬彦は言ってゐる。
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そら、動くぞ。ちんちんちん。
レールの間の夏草どもは刎ね起きる。
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底本:「日本の名随筆23 画」作品社
1984(昭和59)年9月25日第1刷発行
1991(平成3)年10月20日第12刷発行
底本の親本:「現代日本詩人全集 第八巻」創元社
1954(昭和29)年1月発行
※北川冬彦詩集「花電車」に寄せられた文章です。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※促音が小書きされているのは底本通りです。
入力:加藤恭子
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年5月4日作成
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