肖像と一しよに、大道店《だいだうみせ》に恥を晒して終つたのである。
これだけの不幸の重なつた物語で見れば、賢明なる道徳の教師先生は、この中から疑ひもなく豊富な材料を見出す事であらう。あらゆる国の人達は、昔から総ての出来事を種にして、道徳を建設したではないか。さうして見ればこの場合に道徳論をするのは造作もないが、只どういふ道徳をこの中から引き出したが好いか、分からない。只その選択に困る。作者はそんな事をする事は御免を蒙りたい。なぜといふに、作者の経験によれば、こんな時に吐き出す金言は、その証明の力が大きい丈、それ丈不幸に遭遇したものに対して、無駄な残酷を敢てするに当るからである。
底本:「鴎外選集 第14巻」岩波書店
1979(昭和54)年12月19日第1刷発行
初出:「新小説 一六ノ七」
1911(明治44)年7月1日
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2000年5月11日公開
2005年12月25日修正
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