ごうふう》過ぐる処《ところ》花空しく落ち 迷霧開く時銃忽ち鳴る 狗子《くし》何ぞ曾《かつ》て仏性無からん 看経《かんきん》声裡|三生《さんせい》を証す
犬塚信乃《いぬつかしの》
芳流傑閣勢ひ天に連なる 奇禍危きに臨んで淵を測らず ※[#「足へん+圭」、第4水準2−89−29]歩《きほ》敢て忘れん慈父の訓 飄零《ひようれい》枉《ま》げて受く美人の憐み 宝刀|一口《ひとふり》良価を求む 貞石三生宿縁を証す 未だ必ずしも世間偉士無からざるも 君が忠孝の双全を得るに輸《つく》す
浜路《はまじ》
一陣の※[#「堽のつくり」、第4水準2−84−76]風《こうふう》送春を断す 名花空しく路傍の塵に委す 雲鬟《うんかん》影を吹いて緑地に粘《でん》す 血雨声無く紅巾に沁《し》む 命薄く刀下の鬼となるを甘んずるも 情は深くして豈《あに》意中の人を忘れん 玉蕭《ぎよくしよう》幸ひに同名字あつて 当年未了の因を補ひ得たり
犬川荘助《いぬかわそうすけ》
忠胆義肝|匹儔《ひつちゆう》稀なり 誰か知らん奴隷それ名流なるを 蕩郎《とうろう》枉げて贈る同心の結《むすび》 嬌客俄に怨首讎《えんしゆしゆう》となる 刀下|冤《えん》を呑んで空しく死を待つ 獄中の計|愁《うれい》を消すべき無し 法場|若《も》し諸人の救ひを欠かば 争《いか》でか威名八州を振ふを得ん
沼藺《ぬい》
残燈影裡刀光閃めく 修羅闘一場を現出す 死後の座は金※[#「くさかんむり/函」、第3水準1−91−2]※[#「くさかんむり/啗のつくり」、第4水準2−86−33]《きんかんたん》を分ち 生前の手は紫鴛鴦《しえんおう》を繍《ぬ》ふ月※[#「さんずい+冗」、第4水準2−78−26]《げつちん》秋水珠を留める涙 花は落ちて春山土|亦《また》香ばし 非命|須《すべか》らく薄命に非ざるを知るべし 夜台長く有情郎に伴ふ
犬山道節《いぬやまどうせつ》
火遁の術は奇にして蹤《あと》尋ね※[#「匚<口」、第4水準2−3−67]《かた》し 荒芽山畔|日《ひ》将《まさ》に※[#「さんずい+冗」、第4水準2−78−26]《しず》まんとす 寒光地に迸《ほとばし》つて刀花乱る 殺気人を吹いて血雨|淋《りん》たり 予譲《よじよう》衣を撃つ本意に非ず 伍員《ごいん》墓を発《あば》く豈《あに》初心ならん 品川に梟示《
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