く調べて見ませう、』と。スツカリ胆を奪はれてヘタ/\と参つて了ひ、見事敗北の形で三人共にソコ/\と暇乞ひして引下つた。
『之なり別れちやアツケナイ。』と残花は外へ出ると提議した。『ドツカで茶でも喫みませう。』と今は無くなつたが其頃は東京に一ケ処か二ケ処しか無かつた土橋の壺屋の二階へ上つた。
 そこで三人は今日の実験の成果を語り合つたが、三人共に事実の幻しのやうなものが当つたらしい。
『□□のホクロは驚いた。』と残花はテレ秘しにゲラ/\と笑ひながら、『自分のカラダだつてソンナ事まで調べちやゐないからマゴついて了う。』
『嚇かされたネ……エツヘツヘツ。』と坪内君も心から笑止しさうに笑つた。『□□のホクロは奇抜だ。あの調子で度胆を抜くのがコツだネ!』
 彼これ小一時間も□□のホクロに花を咲かして三人は別れ/\に帰つた。
 残花の□□に果してホクロが有つたか無かつたか、其後訊きもしなかつたし話しもしなかつたし夫ぎりイツカ忘れて了つた。
 此の愛嬌のある逸話を残した残花も今は天国だか極楽だかの人(残花は仏耶両道だつた)となつたが、此の一喝された瞬間のタヂ/\となつた容子やテレがくしのゲラ/\笑ひ
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