、丁度市区改正の時取払いになるお城の石垣と同様なものではあるまい乎。市街の子たる我々の頭は郊外生活を楽むには実は余りにプロセイックである。と云って、道路の繁昌に伴う雑音塵埃に無頓着なるには少しくポーエチック過ぎる。我々は文明を呪うものでは無い。却て文明を謳歌しておる。が、文明は我々を駆逐せんとして無言の逐客令を布いておる。我々の身の上も誠に以て厄介なる哉。[#下げて、地より1字あきで](大正二年五月現代)



底本:「魯庵の明治」山口昌男、坪内祐三編、講談社文芸文庫、講談社
   1997(平成9)年5月9日初版発行
底本の親本:「沈黙の饒舌」丙午出版社刊
   1928(大正3)年5月5日初版発行
入力:斉藤省二
校正:松永正敏
2001年5月19日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全12ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
内田 魯庵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング