をらん。よその奥さんの瑕瑾探しをしたり、羨ましがつたり、妬たんだり、慢つたり衒つたりするに維れ日も足らずといふやうになる。之には何よりも読書するが妙薬である。
尤も若い女は大抵新らしい教育を受けてるから、昔しの女に比べると無論読書する習慣はついてるが、読書を以て第一の娯楽とする程度までに進めなければならぬ。一体読書は娯楽であつて勉強では無いのだが、読書するのを勉強すると同一に心得てるのが世間の第一の誤解だ。此点に就て云ふ事もあるが、之も別論だから差置くが、茲に読書しろといふのは何も一と口に云ふタメになる書物を読めといふのでは無い、面白い書物を読めといふのだ、芝居や寄席へ行くと同一の興味を買ふ事が出来る書物を読めといふのだ。恁ういふ興味中心の書物を読んでる内に書物の習慣がつけば自づとタメになる書物にも余計接するやうになる。又興味中心の面白い書物でも決してタメにならぬ事は無い、少くも話題を富まして下らぬ瑕瑾さがしや贅沢咄を少くするだけにても効能がある。
左に右くもつと読書しなければイカン。主人公自ら読書を奨励するは勿論だが、一家の事は主婦の力にある、主人公が待合入りを何よりの娯楽として
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