果が余り宜しく無いのは体力其他種々の原因があろうが、第一には読書の習慣が無いから青年の知識慾が忽ち萎靡して頭脳が鈍つて了ふのだ。教課書や教師のレクチユアルばかりに噛り付いて参考書を読まぬやうな学生は駄目だ。学校の成績が能くても学校を出てからは駄目になつて了ふ。
 処で此読書の習慣は一朝一夕に作れるものでは無い、書物を読むと頭痛がするの肩が張るのといふ人間にイクラ読書を勧めた処で読書するものでは無い。どうしても児童の時から、早くから読書する習慣を作らねばならぬ。先づ此読書に対する家庭の考から一変して掛らねばならぬのだ。児童が、お伽ばなしばかり読んでると心配するやうな事ではイカン、知識慾の盛んなる児童が学校の教師に授けられた知識だけに満足するやうな事ではならぬ。児童が書物が好きなのは此上も無い結構な咄、ドシ/\読ませるが好い。勿論、偶には悪い事もあるが、総て害があるのを恐れてゐては何もさせられぬ。怪我をしてはならぬ、イタヅラをしてはならぬと、一々心配してゐたら手足を縛つて真綿にでもくるんで置かなければなるまい。頭の柔かな児童は始終踏み違ひをしないやうに導いてやらねばならぬから、書物を当てが
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