とてはあまりに軽少なる婦人の天職というべし。されば炊事といい、裁縫というがごとき、その大部分はむしろ器械の天職にして、決して人間の天職にあらず。今日においてこそは、社会組織の不完全なるがゆえに、かようなるくだらぬことが人間の手仕事となりおれども、将来の進歩せる社会においては、たいていのめんどうなることはみな器械の働きとなり、人間はただこの器械を用いて僅少《きんしょう》の骨折りをなすにすぎざることとなるべし。しかしてその僅少の働きは、女子のなすべきものとも、男子のなすべきものとも限らず、だれにてもただ便宜に従いてこれに当たるべく、女子の天職などというものはほとんど皆無に帰するなるべし。
三
かようのことを申さば、論者あるいは大いに小生を責めていわん。なんじいかに奇矯の言をなして婦人の天職を皆無に帰せしめんと欲するも、妊娠、分娩《ぶんべん》、育児のことに至っては、ついにこれを婦人の天職にあらずと言うをえざらんと。いかにもしかり。このことばかりは器械でらちをあけるという訳にもゆかず、男子が分担するという訳にもゆかず、小生といえどもこれをもって高等女性動物の天職なりと認むるの外な
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