私の父
堺利彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)疱瘡《ほうそう》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)堺|得司《とくじ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)たしなみ[#「たしなみ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)パラ/\パラ/\
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私の覚えている父は既に五十であった。髪の毛などは既にやや薄くなっていたように思う。「何さよ気分に変りは無いのじゃがなア」などと、若やいだようなことを言うていることもあったが、何しろ私の目には既に老人であった。名は堺|得司《とくじ》。
父の顔にはかなり多く疱瘡《ほうそう》の跡があった。いわゆるジャモクエであった。しかしその顔立ちは尋常で、むしろ品のよい方であった。体格は小柄で、しかも痩せぎすであった。サムライのたしなみ[#「たしなみ」に傍点]としては、剣術よりも多く柔術をやったらしい。弓も少しは引いたらしい。喘息持ちでずいぶん永く寝ていることもあったが、ズット年を取ってからは直っていた。そういう体質上、力わざはあまりしなか
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