して物を見ると、何でも素晴らしく大きく見えたので、面白くて仕様がなかった。しかしそれを友達に見せて自慢することも、一緒に面白がることも出来ないのが、非常に残念だった。同時に、もしか露見しやせぬかという恐怖が盛んに起って来た。もうそうなると、ただそれを持ってることだけが大変な苦労で、毎日毎日どうしたものかと心配していた。いっそ元の処に持って行って返そうと決心した。しかし気がつかれないように返すということがまた大変だった。そうこうする中、幸いなことには、ある日どこかでその虫眼鏡を落してしまった。それを落したと気がついた時、私は実にホッとして安心した。
底本:「日本の名随筆49 父」作品社
1986(昭和61)年11月25日第1刷発行
1988(昭和63)年1月20日第4刷発行
底本の親本:「堺利彦伝」中公文庫、中央公論社
1978(昭和53)年4月
入力:もりみつじゅんじ
校正:今井忠夫
2000年11月15日公開
2005年6月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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