獄中生活
堺利彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)糒《ほしいい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「金+大」、第3水準1−93−3、57下−16]《だい》
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   一 監獄は今が入り時

 寒川鼠骨君には「新囚人」の著がある。田岡嶺雲君には「下獄記」の著がある。文筆の人が監獄に入れば、必ずやおみやげ[#「おみやげ」に傍点]として一篇の文章を書く例である。予もまた何か書かずにいられぬ。
 監獄は今が入り時という四月の二十一日午後一時、予は諸同人に送られて東京控訴院検事局に出頭した。一人の書記は予を導いてかの大建築の最下層に至った。薄暗い細い廊下の入口で見送りの諸君に別れ、予はひとり奥の一間に入れられた。この奥の一間には鉄柵の扉がついていて、中には両便のために小桶が二つおいてあるなど、すでに多少の獄味を示している。あとで聞けばこれが仮監というのであった。ここに待たされること一二時間の後、予は泥棒氏、[#「、」は底本では脱落]詐欺氏、賭博氏、放火氏
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