な三角形の板張りがあって、土瓶、小桶などが置いてある。こりゃなかなかしゃれたものだと予は思うた。その夜はそのままフロックコートの丸寝をやった。
二十一日の朝、糒《ほしいい》のような挽割飯を二口三口食うたばかりでまた取調所に引出され、午前十時頃でもあったろうか、十五六人のものどもと一しょに二台の馬車に乗せられて、今度は巣鴨監獄へと送られた。
ここでチョット監獄署の種類別を説明しておかねばならぬ。まず東京監獄が未決監、市ガ谷監獄が初犯再犯などを入れるところ、巣鴨監獄が三犯以上の監獄人種および重罪犯などを入れるところの由。それから予らのごとき軽禁錮囚、および何か特別の扱いをうける分は、みな巣鴨に送られるのである。ついでに書いておくが女囚は八王子におかれ、未丁年囚は川越におかれる。
三 巣鴨監獄
巣鴨監獄に着いて、サアいよいよ奈落の底に落ちて来たのだと思うと、あまり気味がよくない。
まず玄関のような一室で素裸にせられて、それから次の室で、「口を開けい」「両手をあげい」「四ん這いになれい」などという命令の下に身体検査をうけて、そこで着物と帯と手拭と褌とを渡される。いずれも柿色染
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