、故郷《ふるさと》を離れる事が出来ないので、七年という実に面白い気楽な生涯をそこで送り、極《ごく》おだやかに往生を遂《とげ》る時に、僕をよんで、これからは兼て望《のぞみ》の通り、船乗りになっても好《よい》といいました。僕は望が叶《かなっ》たんだから、嬉しいことは嬉しいけれど、ここを離れて行くとなると何だか心残《こころのこり》です。ですが僕はこんなに気楽には見えてもあのように終りまで心にかけて、僕のようなものの行末を案じて下すった奥さまに対して、是非《ぜひ》清い勇ましい人物にならなくッてはならないと、始終考えているんです。



底本:「日本児童文学名作集(上)」岩波文庫、岩波書店
   1998(平成10)年6月15日発行第8刷)
入力校正者:浜野 智
1999年2月20日公開
2001年8月30日修正
青空文庫作成ファイル:
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