岬の端
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)括《くく》つてゐる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十|格好《かつかう》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+是」、第4水準2−93−60]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)うす/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
細かな地図を見ればよく解るであらう。房州半島と三浦半島とが鋭く突き出して奥深い東京湾の入り口を極めて狭く括《くく》つてゐる。その三浦半島の岬端から三四里手前に湾入した海浜に私はいま移り住んでゐるのである。で、その半島の尖端の松輪崎といふのは私たちの浜からやゝ右寄りの正面に細く鋭く浮んで見ゆる。方角はちやうど真南に当る。また、前面一帯は房州半島で、五六里沖に鋸山や二子山が低く聳え、左手浦賀寄りの方には千駄崎といふ小さな崎が突き出てゐる。だから眼前の海の光景は一寸見には四方とも低い陸地に囲まれた大きな
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