比叡山
若山牧水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)黄昏《たそがれ》近かつた。
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一向|埓《らち》があかず
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]すと
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\ゆつくり
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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山上の宿院に着いた時はもう黄昏《たそがれ》近かつた。御堂の方へ參詣してからとも思うたが、何しろ私は疲れてゐた。「天台宗講中宿泊所」「一般參詣者宿泊所」といふ風の大きな木の札の懸つてゐるその冠木門を見ると、もう脚が動かなかつた。
門を入るとツイ眼の前に白い花がこんもりと咲き枝垂れてゐた。見るともなく見れば、思ひもかけぬ幾本かの櫻の花である。五月の十八日だといふに、と思ふと、急に山の深いところに來てゐるのを感じた。飛石を傳つて、苔の青い庭を玄關まで行つたが、大きな建物には殆んど人
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