、おまけに人夫などの着さうな半纒を着たところ、鮮人と見られても否やは言へぬ風采であつたのだ。
久し振だ、勿體《もつたい》ない樣だと言ひながら三人の人たちが盃をあげてゐるところへ、
『先生、やつて來ましたよ。』
と、聞き馴れた聲が玄關で起つた。思ひもかけぬ笹田登美三君が大きな荷物を擔いで立つてゐるのだ。
『やア笹田さんだ/\。』
子供たちが一齊に飛び出して來た。同君は矢張り大阪地方の新聞記事を見て、不安でならぬので出懸けて來て呉れたのであつた。そしてそれこそ喰べものにも困つてゐはせぬかとわざ/\澤山な餠をついて擔いで來て呉れた。なほ來がけに寄つた大阪の某君の許から頼まれたと云つて渡された包を開いて見ると、食料、藥品、燃料と、くさぐさの心づくしが收めてあつた。
『まアほんとに、どうしませうねヱ。』
一つ/\手にとつては妻は早や涙ぐんでゐる。
やがて皆床を敷いて横になつた。その前から小さなのが一つ二つとゆれてゐたのであつたが、九時頃でもあつたか、やゝ大きいのがゆら/\と動いて來た。丁度私は便所に行かうと廊下を歩いてゐた所で、『來たナ』と思つて立ち止つた途端にツイ眼の前の座敷から、
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