樹木とその葉
なまけ者と雨
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)四邊《あたり》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)一つ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない樣な欝陶しさを感じがちだ。無論爲事は手につかず、さればと云つてなまけてゐるにも息苦しい。
それが靜かに四邊《あたり》を濡らして降り出して來た雨を見ると、漸く手足もそれ/″\の場所に歸つた樣に身がしまつて來る。
机に向ふもいゝし、寢ころんで新聞を繰りひろげるもよい。何にせよ、安心して事に當られる。
雨を好むこゝろは確に無爲《むゐ》を愛するこゝろである。爲事の上に心の上に、何か企てのある時は多く雨を忌んで晴を喜ぶ。
すべての企てに疲れたやうな心にはまつたく雨がなつかしい。一つ/\降つて來るのを仰いでゐると、いつか心はおだやかに凪いでゆ
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