樹木とその葉

若山牧水

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)屹度《きつと》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すれ/\に
−−

ソレ、君と通つて
此處なら屹度《きつと》釣れると云つた
あの淀み
富士からと天城《あまぎ》からとの
二つの川の出合つた
大きな淀みに
たうとう出かけて行つて釣つて見ました
かなり重い錘《おもり》でしたが
沈むのによほどかゝる
四尋からの深さがありました
とろりとした水面に
すれ/\に釣竿が影を落す
それだけで私の心は大滿足でした
山の根はいゝが
惜しいことに
釣つてゐる上に道がある
なるたけ身體を
小松の蔭にかくしてゐるのだが
竿だけは上から眼につく
「あたりますかナ」
一人の男が上に蹲踞《しやが》んで云ふのです
「イヤ一向……
一體此處では何が釣れるのです」
この私の問には[#「問には」は底本では「間には」]
向うで困つたやうです
「さア……
うなぎ
なまづ
ふな
まア、まるた位ゐでせうナ……
餌は何です」
「みゝずです」
「みゝずなら
何にでもいゝ」
と言つてのそりと大きな男は立ち上
次へ
全2ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング