に皆が一つ処に固まってしまうのじゃあ、完全な警戒|網《もう》でございとは、ちょっと云えないと思うが、どうだ」
「おお」と署長は始めて気がついたらしく、「これ皆、一体どうしたんや。よく注意しておいたのに、こう集って来たらあかへんがな。――ああ、あの部屋に間違いはあらへんやろな」
署長は慌ててそこを飛びだし、主人公の籠城している居間の方へ駈けだした。
「ウム、よかった。――」
署長は居間の前に、警官が一人立っているのを見て、ホッと安心した。
「オイ異状はないか。ずっとお前は、ここに頑張っていたんやろな」
「はア、さっきガチャンのときに、ちょっと動きましたが、すぐ引返して来て、此処に立ち続けて居ります」
と東京弁のその警官が応えた。
「なんや、やっぱり動いたのか」
「はア、ほんの一寸《ちょっと》です。一分か二分です」
「一分でも二分でも、そらあかんがな」
といったが、他の二人はどこへ行ったか居なかった。
「さあ、ちょっと中へ合図をしてみい」
警官は心得て、ドンドンドン、ドンドンと合図どおりに扉をうった。そしてそれをくりかえした。
「――御主人! 玉屋さーん」
署長は扉に口をあてん
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