かかった。宝塚ホテルの電話は屹度《きっと》蠅男の耳に入るに違いないことは、それ迄の例で分って居たから、それを知れば蠅男はその夜のうちに彼の秘密を知って居ると云う糸子の寝所を襲うだろうとは予期出来ることだった。全くその通りだった。果して蠅男は天井裏を這って侵入し、そこで書斎内で待期して居た帆村探偵とあの激しい死闘を交えるに至ったものであった。
しかし折角の帆村の奇襲作戦も蠅男の超人的腕力に遭ってはどうすることも出来ず、遂に闇の中に空しく長蛇を逸してしまった形だ。さて今や怪物蠅男は何処に潜んで居るのだろう?
唯一つ茲《ここ》に帆村を心から喜ばせたものは、蠅男の落として行った機関銃仕掛の左腕であった。帆村はそれを見せるために、糸子を部屋の中に誘った。
「ごらんなさい。糸子さん。恐ろしい仕掛のある鉄の腕です。こっちを引張れば、生きた腕と全く同じように伸び縮みをするし、こう真直にすれば、機関銃になるんです。まだあります。ほらごらんなさい。弾丸《たま》の代りに、こんな鋭い錐《きり》が吹き矢のようにとびだしもするし、その外ちょっと重いものなら、ここにひっかけてパチンコかなどのように撃ちだせる。―
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