動車をとばしていった。そして到着したところは、阪急の大阪駅乗車口であった。
 彼はそこで大勢の人をかきわけ、大きな声で宝塚ゆきの切符を買った。
 急行電車に乗りこんだ彼は、乱暴にも婦人優先席にどっかと腰を下ろすや、腕ぐみをして眼を閉じた。そして間もなく大きな鼾《いびき》をかきだすと見る間に、隣に着飾った若奥様らしい人の肩に凭《もた》れて、いい気持ちそうに眠ってしまった。
 車掌が起こしてくれなければ、彼はもっと睡っていたかも知れない。彼は慌てて、宝塚の終点に下りて、電柱の側らで犬のような背伸びをした。
 それから彼は、太い籐《とう》のステッキをふりふり、新温泉の方へ歩いていった。
 でも彼は、新温泉へ入場するのではなかった。彼はその前をズンズン通りすぎた。そして、やがて彼が足早に入っていったのは、池谷医師の控邸だった。それは先に、糸子が訪れた家であり、それよりもすこし前、池谷医師がお竜と思《おぼ》しき女と、肩をならべて入っていった家であった。
 入口の扉には、鍵がかかっていなかった。帆村は無遠慮にも、靴を履いたまま上にあがっていった。何を感じたものか、彼は各室を鄭重に廻っては、押入や戸
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