さよりは、この蠅男の電話を、ぜひとも水田検事に聞かせてやりたかった。
「どうだネ、帆村君。今夜の殺人事件は、君の気に入ったかネ」
「貴様が殺《や》ったんだナ。塩田先生をどういう方法で殺したんだ。村松検事は貴様のために、手錠を嵌《は》められているんだぞ」
「うふふふ。検事が縛られているなんて面白いじゃないか」と蠅男は憎々しげに笑った。「どう調べたって、検事が殺ったとしか思えないところが気に入ったろう。口惜しかったら、それをお前の手でひっくりかえしてみろ。だが、あれも貴様への最後の警告なんだぞ。この上、まだ俺の仕事の邪魔をするんだったら、そのときは貴様が吠《ほ》え面《づら》をかく番になるぞ。よく考えてみろ。もう電話はかけない。この次は直接行動で、目に物を見せてくれるわ。うふふふ」
「オイ待て、蠅男!」
 だが、この刹那《せつな》に、電話はプツリと切れてしまった。
 神出鬼没とは、この蠅男のことだろう。彼奴は、帆村の入った先を、すぐ知ってしまったのだ。いまの電話の脅し文句も、嘘であるとは思えない。蠅男は宣言どおり、いよいよこれからは直接行動で、帆村に迫ってこようというのだった。帆村はもう覚悟
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