れア大変なものが見える。大川さん。火床の中に、人骨《じんこつ》らしいものが散らばっていますぜ?」
「ええッ、人骨が――。どこに?」
「ホラ、今燃えている一等大きい石炭の向う側に――。見えるでしょう」
「おお、あれか。なるほど肋骨《ろっこつ》みたいや。これはえらいこっちゃ。いま出して見まっさ」
さすがは場数《ばかず》を踏んだ巡査部長だけあって、口では愕《おどろ》いても、態度はしっかりしたものだ。腰をかがめると、火掻《ひか》き棒《ぼう》で、その肋骨らしいものを火のなかから手前へ掻きだした。
「フーン。これはどう見たって、大人の肋骨や。どうも右の第二|真肋骨《しんろっこつ》らしいナ」
「こんなものがあるようでは、もっとその辺に落ちてやしませんか」
「そうやな。こら、えらいこっちゃ。――おお鎖骨《さこつ》があった。まだあるぜ。――」
大川は灰の中から、人骨をいくつも掘りだした。その数は皆で、五つ六つとなった。
「――もう有りまへんな。こうっと、胸の辺の骨ばかりやが、わりあいに数が少いなア」
と、彼は不審《ふしん》の面持で、なにごとかを考えている様子だった。
それにしても人骨である限り、
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