た。
 もう一つ、書き落としてはならないものがあった。それはこの部屋にはむしろ不似合なほどの大|暖炉《ストーブ》だった。まわりは黒と藍《あい》との斑紋《はんもん》もうつくしい大理石に囲われて居り、大きなマントルピースの上には、置時計その他の雑品が並んでいた。しかもその火床《かしょう》には、大きな石炭が抛《ほう》りこまれて居り、メラメラと赤い焔をあげて、今や盛んに燃えているところだった。
「これやア。えろう燃やしたもんや。ムンムンするわい」
 と、巡査部長はストーブの方に近づいた。
「ほほう、こらおかしい。傍へよると、妙な臭《かざ》がしよる――」
「えッ。――」
 一同は、愕《おどろ》いてストーブの傍に駆けよった。


   崩《くず》れる白骨《はっこつ》


「これ見い。こんなところに、妙な色をした脂《あぶら》みたよなもんが溜っとるわ」
 と大川部長は、火かきの先で、火床《かしょう》の前の煉瓦敷《れんがじ》きの上に溜っている赤黒いペンキのようなものを突いた。
「何でっしゃろな」
「さあ――こいつが臭《にお》うのやぜ」
 と云っているとき、巡査部長のうしろから帆村が突然声をかけた。
「こ
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