ックした。
 しかるに、室のなかからは、何の返事もない。聞えないのかと思って、もう一度、すこし高い音をたててノックしたが、やはり返事がない。
「オイ、どうしたんじゃ。お前は部屋を間違えとるんじゃないか。しっかりせい」
 と、気短かの鴨下ドクトルは、ボーイを呶鳴りつけた。
 ボーイは、そういわれて、室番号を見直したが、たしかに間違いない。室内には、電灯が煌々《こうこう》とついている。六階で電灯のついているのは、そんなに沢山あるわけではない。どうしてもこの室なのに、塩田先生と村松氏は、一体中で何をしているのだろう。
 ボーイは把手《ノッブ》をつかんで、押してみた。
 だが、扉はビクともしない。内側から鍵がかかっているのだった。
「変だなア。モシモシ、お客さん――」
 と、ボーイは大声で呶鳴りながら、扉を激しく叩いた。
 すると、扉のうちで、おうと微《かす》かに返事をする者があった。
 ボーイはホッとして、鴨下ドクトルの顔を見上げた。ドクトルは鬚だらけの顔のなかから、ニヤニヤと笑っていた。
 やがて扉の向うで、鍵の廻る音が聞えた。そして扉がギーッと内に開いて、顔を出したのは村松検事だった。だ
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