た顔色の青白い中年の紳士だった。この老人は、云わずとしれた鴨下ドクトルだったし、黒服の中年紳士は村松検事であった。
二人はボーイに来意をつげた。
ボーイは早速電話でもって、塩田先生に貸してある小室へ電話をかけた。すると塩田先生が電話口に現われて、
「おおそうか。鴨下ドクトルに、村松も一緒について来たのか。たしかに二人連れなんだネ」
「左様でございます」
とボーイは返事をした。
すると塩田先生は、何思ったか急に言葉を改めて、ボーイに云うには、
「実は、これは客に知れては困るので、君だけが心得て、ソッと知らせて貰いたいんだが……」、と前提して、「その村松という客の前額に、斜めになった一寸ほどの薄い傷痕がついているだろうか。ハイかイイエか、簡単に応えてくれんか」
ボーイはこの奇妙な質問に愕いたが、云われたとおり村松氏の額《ひたい》を見ると、なるほど薄い傷痕が一つついていた。
「ハイ、そのとおりでございます」
「おおそうかい」と、塩田先生は安心したような声を出して、「では丁寧に、こっちへお通ししてくれんか」
二人の客は、そこで帽子とオーバーとを預けて、エレヴェーターの方に歩いていっ
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