ル!」
「おお儂の名を呼んだな。――呼んだのはお前じゃな。うむ、これは署長じゃ。この間会って知っている。お前は感心じゃが、お前の部下は実に没常識ぞろいじゃぞ。儂のことを蠅男と呼ばわりおったッ」
老紳士は果然《かぜん》鴨下ドクトルだったのだ。ドクトルはなおも口をモガモガさせて、黒革の手袋をはめた手に握った細い洋杖《ステッキ》をふりあげて、いまいましそうにうちふった。
正木署長はドクトルに事情を話して諒解《りょうかい》を乞うた上で、なおドクトルが夜の動物園で何をしていたのかを鄭重《ていちょう》に質問した。
「なにをしようと、儂の勝手じゃ。儂の研究の話をしたって、お前たちに分るものか」
「それでもドクトル、一応お話下さらないとかえってお為になりませんよ」
「ナニ為にならん。お前は脅迫するか。儂は云わん、知りたければ塩田律之進《しおたりつのしん》に聞け」
「えッ、塩田律之進というと、アノ鬼検事といわれた元の検事正《けんじせい》塩田先生のことですか」
村松検事が愕いて横合いから出てきた。
「そうじゃ、塩田といえば彼奴《あいつ》にきまっとる。あれは儂の昔からの友人じゃ」とドクトルはジロリと一
前へ
次へ
全254ページ中167ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング