ば、大川は下へ下りていったきり、なかなか帰ってこないが、なにをしているのであろう。
 帆村が不審を起しているところへ、当の大川主任は佩剣《はいけん》を握ってトントンと飛びこんできた。
「大川さん。どうです、分った?」
「分った。――」
 主任は、苦しそうに喘《あえ》ぎ喘《あえ》ぎ応えた。
「どう分ったんです?」
「天王寺《てんのうじ》の新世界のわきだす」
「え、新世界のそば?」
「はア、そや。天王寺公園南口の停留場の前に、一つ公衆電話がおまんね。その中に、蠅男が入りよったんや。あんさんの命令どおり、すぐ電話局へかけてみて、あんさんの話し相手が今どこから電話をかけているか調べてもろうてな、それから直ぐ署の方へ連絡しましたんや。蠅男が今これこれのところから電話を懸けているねン、はよ手配たのみまっせいうたら、署長さんが愕《おどろ》いてしもうて、へえ蠅男いう奴はやっぱり人間の声だして話しているかと問いかえしよるんや。――しかしすぐ手配するいうとりました」
 帆村はうちうなずいて、主任に今しがた電話を通じて警官隊が現場に到着したらしい騒ぎを耳にしたことや、蠅男が女を連れていて、機関銃をもって抵抗
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