をするかしれないと云っています。あの右手左手の機関銃やなんかのカラクリも、蠅男がドクトルに隠れて作りあげたものに相違ありません。さあ、われわれは一刻も早く、市民の安全のために、恐るべき蠅男を捕えなければなりません」
「そうだ」と村松検事も警官隊の方をふりむき、「蠅男の恐るべき正体はようやく分ったが、蠅男は毒牙を磨いて、暴行の機を狙っているのだ。彼奴《きゃつ》を捕えてしまわないうちは、われわれは枕を高くして眠れないのだ。さあ、こうなったら決死の覚悟で、直ちに蠅男狩りを始めるんだ!」
警官隊も、この検事の激励の辞にふるい立った。そして此処に、大阪全市をあげての警備陣が組織され、厳重を極めた大捜索戦の幕が切って落とされた。怪人蠅男は、そも何処《いずこ》に潜んでいるのであろうか。
警察投書
稀代の怪人「蠅男」の世にも恐ろしき正体は遂に曝露《ばくろ》した。
青年探偵帆村荘六の必死の努力は、警察官をよく援《たす》けて、この前代未聞の怪事件の謎を解くことに成功したのだった。
ただ惜しいことには、もう一歩というところで、怪人「蠅男」を逃がしてしまったことである。
蠅男は、しかしながら、帆村の得意とする投縄によって、機関銃仕掛になっている左腕を肩のところから※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ落とされ、あまつさえ左の足首さえ切断されてしまった。蠅男の勢いは、それだけ削がれたのであった。これは皆、帆村の直接手を下した殊勲であった。
だが普通の人間とちがい、勝れた智能をもった蠅男のことだから、いついかなる手をもちいて又候《またぞろ》暴逆の挙に出てくるか分らない。だから結局、蠅男を完全に逮捕してしまわないうちは、大阪全市の市民たちは、枕を高くして睡ることができないわけだった。
帆村探偵を激励する手紙や、警察官の奮起をのぞむ投書などが、毎日のように各署の机の上にうずたかく山のように積まれていった。
蠅男は何処に潜んでいるのであろうか。
多分、お竜と呼ばれる彼の情婦と手を組みあって、市内に潜伏しているのであろう。
さあいま一息だとばかり、係官はじめ帆村探偵も、昼夜を分かたず、蠅男の逃げ去った跡を追い、要所要所を隈なく探していったのであるが、蠅男の隠れ様がうまいのか、それとも係官たちの探し様が拙いためか、尋ねる蠅男の行方について、何の手懸りも発
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