》について――というのです」
 そこへドヤドヤと、警官と園丁との一団が鴨田研究員を取巻いた。
「もうこの建物は天井から床下《ゆかした》まで調べましたが、異状がありませんでした。唯《ただ》残っているのは、あの三つのタンクですが、お言葉を信用してそのままにして置きます」
 帆村はそれを聞くと飛出してきた。
「待って下さい。あのタンクは、是非調べて下さい」
「でも開けられないのですよ」帆村の見識《みし》り越《ご》しの警官が云った。
「そんなことは無い。ね、鴨田さん、開けた方が貴方《あなた》のためにもいいですよ。あのタンクだけで、清浄潔白《せいじょうけっぱく》になるのじゃありませんか」
「いやそう簡単に明けられません」鴨田は強く反対した。「あれを明けると、爬虫館の室温や湿度が急降《きゅうこう》して、爬虫《はちゅう》に大危害《だいきがい》を加えることになるので、ちょっとでも駄目です」
「私は大したことはあるまいと思うのですが、演《や》ってみては?」帆村は尚《なお》も主張した。
「いやそうは行きません。私は園長から相当の責任を持って爬虫類を預っているのですから、拒絶《きょぜつ》する権利があります。
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