爬虫館事件
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)帆村荘六《ほむらそうろく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一時間|懸《かか》ります。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しかも[#「しかも」に傍点]だ
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     1


 前夜の調べ物の疲れで、もう少し寝ていたいところを起された私立探偵局の帆村荘六《ほむらそうろく》だった。
「お越し下すったのは、どんな方かね」
「ご婦人です」助手の須永《すなが》が朗《ほが》らかさを強《し》いて隠すような調子で答えた。「しかも年齢《とし》の頃は二十歳《はたち》ぐらいの方です」
(なにが、しかも[#「しかも」に傍点]だ)と帆村はパジャマの釦《ボタン》を一つ一つ外《はず》しながら思った。この手でも確かに目は醍《さめ》る。……
「十分間お待ちねがうように申上げて呉《く》れ」
「はッ。畏《かしこ》まりました」
 須永はチョコレートの兵隊のように、わざと四角ばって、帆村の寝室《しんしつ》を出ていった。
 隣りの浴室の扉《ドア》をあけ、クルクルと身体につけたものを一枚残らず
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