俘囚《ふしゅう》
海野十三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)俘囚《ふしゅう》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一番|苦手《にがて》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)[#この行は下揃え一字上げ、名前の部分は一字毎に空きあり]
−−
「ねエ、すこし外へ出てみない!」
「うん。――」
あたしたちは、すこし飲みすぎたようだ。ステップが踉々《よろよろ》と崩《くず》れて、ちっとも鮮《あざや》かに極《きま》らない。松永《まつなが》の肩に首を載《の》せている――というよりも、彼の逞《たくま》しい頸《くび》に両手を廻して、シッカリ抱きついているのだった。火のように熱い自分の息が、彼の真赤な耳朶《みみたぼ》にぶつかっては、逆にあたしの頬を叩く。
ヒヤリとした空気が、襟首《えりくび》のあたりに触《ふ》れた。気がついてみると、もう屋上に出ていた。あたりは真暗《まっくら》。――唯《ただ》、足の下がキラキラ光っている。水が打ってあるらしい。
「さあ、ベンチだよ。お掛け……」
彼
次へ
全35ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング