て頂戴《ちょうだい》」
「はい、上へ参ります。御用の階数を早く仰有《おっしゃ》って下さいまし、二階御用の方はございませんか。化粧品靴鞄ネクタイ御座います。三階|木綿類《もめんるい》御座います。お降りございませんか。次は四階|絹織物《きぬおりもの》銘仙《めいせん》羽二重《はぶたえ》御座います。五階食堂ございます。ええ、六階、七階、あとは終点まで急行で御座います。途中お降《お》りの方は御乗換《おのりか》えをねがいます。ありませんか。では三十八階でございます。どなたもこれまでで御座います。お忘れもののないように、毎度ありがとう御座い」
「まア、ここは屋上。博士の研究室なんてありゃしないわ。あら、あすこにネーム・プレートが下っている。まるで、エッフェル塔の天辺《てっぺん》に鵠《こうのとり》が巣をかけたようね。では、下界《げかい》で待っているあの[#「あの」に傍点]人のために、第二にはロードスターのために、第三は原稿料のために、第四は編集長のために、勇気を出して、この鉄梯子《てつばしご》に掴《つか》まって登りましょう。誰も、梯子の下に、タカリやしないでしょうね。エッサ、エッサ、エッサラエッサ」
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