局長、人骨だけ残っていて、満足な人体が残っていないのはどういうわけですかな」
 そういっているうちに、二人は船橋へ通ずる階段のところへ出た。そのとき下の船艙《せんそう》から、なにかことんと物音がしたのを、二人は同時に聞きとがめた。その妙な物音は、ずっと下の船艙からきこえる。二人はその物音を追ってついに二番船艙の底まではいりこんだ。あたりは電灯も消えて真暗であった。が、どこからともなく吹いてくる血なまぐさい風!
「あっ、あんなところに、なにかキラキラ光っているものがある!」
 と、貝谷が局長の腕をぐっと引寄せた。


   解けた怪異《かいい》


 幽霊船の中に潜んでいた謎は、一体なんであったろうか。船艙のくらがりの中から聞えるごとごとという怪音、それにつづいてキラキラと光った物!
 銃をもった貝谷は、隊長古谷局長の腕をとらえ、
「局長、あれをごらんなさい。光る物は二つならんでいます。あれは動物の眼ですよ」
「どこだい。よく見えないが……」
 といっているとき、うおーっという呻《うな》りごえ。
「局長、一発撃たせてください。そうしないと、こっちがやられてしまいます」
「じゃあ、……」

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